このクルマを「特別仕様車」と呼ぶのは、正直、少し違う気がします。
2026年1月22日、WRC開幕戦ラリー・モンテカルロの舞台で発表された
「GRヤリス Sébastien Ogier 9x World Champion Edition」。
それは、セバスチャン・オジエという伝説を讃える“記念碑”であると同時に、
TOYOTA GAZOO RacingがWRCで積み重ねてきた哲学を、市販車という形で結晶化させた一台でした。
🏆 なぜ「9回目の王者」は特別なのか
セバスチャン・オジエ。
WRCを知る人なら、この名前に説明は不要でしょう。
2025年シーズン、最終戦ラリー・サウジアラビアまでもつれ込んだ激戦。
11戦中6勝、10度の表彰台。
そして、通算9回目のドライバーズチャンピオン獲得。
それは単なる数字の更新ではありません。
“勝ち続ける難しさ”を誰よりも知る男が、なお挑戦をやめなかった証です。
🚗 「Aero performance package」からの深化
この特別仕様車は、2025年に登場した
GRヤリス Aero performance packageをベースに開発されています。
つまり、最初から“走りのための器”は完成していた。
そこに、オジエ自身のフィードバックと思想を重ねたのが、今回の9x Editionです。
🧠 四駆制御の核心「SEB.モード」
最大の技術的トピックは、やはりここでしょう。
オジエ選手とともに開発された専用4WD制御、
「SEB.モード」。
- 前後トルク配分:前40:後60
- 前輪の旋回性を確保
- 後輪駆動力で積極的に姿勢を作る思想
高速度域での一体感、限界域でのコントロール性。
これは“ドリフトを楽しむため”ではなく、タイムを削るための制御です。
🧭 MORIZOモードが語る、もう一つの哲学
もう一つ用意されたのが、「MORIZOモード」。
- 加速時:前後輪を最大拘束(直結)
- 制動時:必要に応じて拘束を緩和
これは、モリゾウこと豊田章男会長がラリーで走り込み、
「これが一番速く、安心できる」と導き出した答え。
その思想を、オジエが気に入り、正式採用された。
この事実だけで、このクルマの“本気度”は伝わると思います。
🎨 外装に宿る、静かな闘志
外板色は、このモデル専用に新規開発された
「グラビティブラック」。
TGRの2025年モータースポーツ活動を象徴する色であり、
派手さではなく、覚悟を感じさせる黒。
- マットブラックホイール
- ブルーの専用ブレーキキャリパー
- フランス国旗モチーフのトリコロールグリル
すべてに意味があり、装飾ではありません。
🏁 内装は「競技の現場」そのもの
インテリアにも、オジエのこだわりが詰め込まれています。
- 小径化された専用ステアリング
- 独立形状のステアリングスイッチ
- 縦引きパーキングブレーキ(専用革巻き)
- トリコロールステッチ
- 専用シリアルナンバープレート
これは“飾るための内装”ではなく、
使い込まれることを前提にした空間です。
🌍 限定100台、その意味
日本向けには、100台限定。
2026年春以降、「GR app」を通じて抽選販売予定。
欧州の一部地域でも100台限定。
合計しても、ほんのわずかな台数です。
これは希少性を煽るためではありません。
「この思想を、本当に理解する人にだけ届けたい」
そんなメッセージにも感じられます。
🔥 これは“記念車”ではなく“意志の塊”
GRヤリス Sébastien Ogier 9x World Champion Editionは、
過去を祝うクルマではありません。
勝ち続けるために、何を捨て、何を磨き続けるのか。
その答えを、静かに、しかし強烈に語る一台です。




















