親が亡くなったあと、車のことは後回しになりがちです。ただ、放っておくと税金の請求だけが届いたり、保険の等級を丸ごと失ったりします。順番さえ分かっていれば、そこまで難しい手続きではありません。
この記事では、車検証を見るところから、乗り続けるか手放すかを決めるところまでを、迷わない順番で並べました。
🚗 最初にやることは車検証の所有者欄を見ること
まず確認するのは、車検証の所有者の名前です。ここが親の名前なら相続の手続きが必要になります。
一方で、ローンやリースで買っていた場合、所有者欄が販売店や信販会社になっていることがあります。この場合は相続ではなく、その会社への連絡が先です。残債の扱いによって、引き継げるか一括で払うかが変わります。
車検証が電子化されていて紙に情報が印字されていない場合は、国土交通省の車検証閲覧アプリで中身を見られます。スマホでも読み取れるので、車の中を探し回る前に試してみてください。
📄 普通車と軽自動車で手続きの重さがまったく違う
ここが一番大きな分かれ目です。普通車は運輸支局で移転登録、軽自動車は軽自動車検査協会で自動車検査証記入申請という手続きになります。
普通車は原則として、相続人全員が実印を押した遺産分割協議書が必要です。全員の印鑑証明書も要ります。相続人が遠方に散らばっていると、書類を集めるだけで数週間かかります。
これに対して軽自動車は、遺産分割協議書そのものが不要です。車を引き継ぐ人の書類だけで手続きが完了します。親の車が軽だった場合、身構えていたほど大変ではありません。
💴 査定額100万円以下なら書類が1枚で済む
普通車でも、手続きを軽くする方法があります。査定額が100万円以下であれば、相続人全員の実印が並んだ遺産分割協議書ではなく、新しい所有者1人の実印だけで作れる遺産分割協議成立申立書を使えます。
相続人が遠方に住んでいたり人数が多かったりすると、書類を取りまとめるだけで時間がかかります。この申立書なら、車を引き継ぐ人だけで手続きが終わります。
ただし条件があります。100万円以下であることを証明する査定書の添付が必要です。日本自動車査定協会に依頼した場合、査定料は軽で5,500円から6,600円、普通車で7,150円から1万2,100円ほどかかります。これは東京支部の例で、支部によって差があります。
つまり、その車がいくらなのかを先に知らないと、どちらの手続きになるのかも決まりません。10年落ちの普通車なら100万円を下回ることが多いですが、ハイブリッドや人気のSUVは意外と超えます。買取相場を調べるところから始めるのが、結局いちばん早い順番です。
無料の査定で今の金額を確認しておけば、手続きの重さも、手放すかどうかの判断材料も同時に手に入ります。
売り方の選び方や必要書類の全体像は、こちらにまとめています。→ 車の売却で損しない手順 売り時から乗り換えまで
🧾 自動車税は誰が払うことになるのか

自動車税は、4月1日時点で車検証に載っている所有者に、その年度の1年分がまとめて課税されます。年度の途中で亡くなっても、この請求が消えるわけではありません。
納税の義務は相続人が引き継ぎます。名義変更をしないまま放置すると、翌年度も親の名前で納税通知書が届き続けます。届いた通知を放置すると延滞金がつくので、乗らない車でも早めに整理したほうが安全です。
売却や廃車をするにしても、亡くなった人の名義のままでは手続きできません。一度は相続人の名義に変える必要がある、という点は覚えておいてください。
ローンが残ったままの車を引き継ぐ場合は、手順がもう少し複雑になります。→ ローンが残った車は売れる 残債ありの売却手順
🛡 任意保険は連絡が遅れると等級が消える
見落とされやすいのが任意保険です。記名被保険者が亡くなった場合、同居していた家族や親族が引き継げば、等級もそのまま引き継げます。
ただし引き継げる相手には条件があります。配偶者なら同居でも別居でも引き継げますが、親子であっても同居していなければ引き継げません。進学や結婚で家を出た子どもは対象外、ということです。
新規で入り直すと6等級からのスタートになるので、親の契約が7等級以上なら引き継ぎを検討する価値があります。逆に5等級以下なら、入り直したほうが保険料は安くなる可能性があります。
そしてもう一点。保険会社によっては、一定期間内に手続きをしないと等級を引き継げなくなる場合があります。気づいたときには長年かけて育てた等級が消えていた、というのが最悪のパターンです。葬儀が落ち着いたら、保険会社への電話を優先してください。
⚠️ 相続放棄を考えているなら車に触らない
これは知らないと取り返しがつかない部分です。借金のほうが多くて相続放棄を考えている場合、車を売ったり乗り回したりすると、財産を受け取る意思があったとみなされて放棄できなくなることがあります。
相続放棄の期限は、亡くなったことを知った日から原則3か月です。財産と借金の全体像が見えていない段階では、車の名義変更も売却も止めておくのが安全です。
判断に迷うなら、先に司法書士や弁護士へ相談してください。車の手続きはそのあとでも間に合います。
📊 引き継ぐか手放すかの比較
| 選択肢 | 向いている状況 | 合わない条件 |
|---|---|---|
| 名義変更して乗り続ける | 同居の家族が引き継ぎ、等級もそのまま使える | 別居の子どもが引き継ぐ場合。等級を引き継げず保険料が上がる |
| 名義変更してすぐ売る | 誰も乗らないが、査定額がそれなりに出る | 相続放棄を検討中の場合。売却が承認とみなされる恐れがある |
| 廃車にする | 動かない、車検も切れている、値段がつかない | 買取相場を調べていない場合。値がつく車を捨てることになる |
| 手続きを保留する | 相続財産の全体像がまだ見えていない | 車検や自動車税の期限が迫っている場合。費用だけ増える |
判断の順番としては、査定額を先に見るのが合理的です。100万円以下かどうかで書類の枚数が変わり、金額次第で乗り続けるか手放すかも変わるからです。
🔋 手続き中に車が動かなくなる問題
見落とされがちですが、数週間から数か月動かさない車はバッテリーが上がります。いざ運輸支局へ持ち込もうとしたらエンジンがかからない、という相談は珍しくありません。
対策は2つです。ひとつは、週に一度でいいので20分ほど走らせること。もうひとつは、ジャンプスターターを1台用意しておくことです。メルテックのジャンプスターターは軽から普通車まで対応するモデルがあり、レッカーを1回呼ぶより安く済みます。
🙅 こんな人には向きません
この記事は、親が普通に車を1台持っていたケースを想定して書いています。次のような場合は、専門家に相談したほうが確実です。
相続人同士で話がまとまっていない場合。誰が車をもらうかで揉めていると、そもそも書類が作れません。
事業用のナンバーや複数台を所有していた場合。手続きの種類が変わります。
親が海外に住んでいた、または相続人に海外在住者がいる場合。印鑑証明書の代わりにサイン証明が必要になり、取得に時間がかかります。
📝 まとめ
やることを順番に並べると、次のようになります。
まず車検証の所有者欄を見て、ローンやリースでないかを確認します。次に相続放棄を検討する可能性があるかを整理します。放棄しないと決めたら、査定額を調べて100万円を超えるかどうかを確認します。そのうえで書類を集め、名義変更を行い、任意保険の引き継ぎを保険会社に連絡します。
この中で最初に動けるのが査定です。金額が分かれば、手続きの重さも、乗り続けるか手放すかも、同時に決まります。しかも無料です。
親の車がいくらになるのかを知っておくと、他の相続人との話し合いも具体的になります。いくらくらいになるという数字は、抽象的な言い合いよりずっと早く話をまとめてくれます。
一括査定の使い勝手が気になる方は、こちらも参考にしてください。→ ユーカーパックの評判
売る前にやっておくと金額が変わる準備もあります。→ 車を売る前にやること7つ


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