クルマの名前が、まず一枚の書類のなかにそっと現れる。そんな瞬間が、わたしはわりと好きです。
スバルが「インプレッサTX」という名前を、米国とカナダで商標出願した、というニュースが入ってきました。まだ実車が出たわけでも、スバルが何かを正式に発表したわけでもありません。
それでも、この小さな”予約”のような動きが、少し前に公開されたあるティーザーと重なって、静かにざわめきを呼んでいます。
そのティーザーというのが、マニュアルトランスミッションを積んだ新型たち。
エンジンを自分の手と足で操る、あの感覚が戻ってくるのかもしれない——そう思うと、なんだか胸の奥がふっと軽くなる気がして。
今日は、確かにわかっていることと、まだ”たぶん”の段階のことを、ていねいに分けながら整理してみます。
🚗 「インプレッサTX」とは──スバルが米国・カナダで商標出願した新ネーミング

まず、確かなところから。
スバルは2026年6月9日、米国特許商標庁(USPTO)に「IMPREZA TX」という名前で商標を出願しました。あわせてカナダの当局にも同様の出願が行われています。
海外メディアのCarscoopsやCarBuzz、Autoblogなどが、出願書類をもとに報じている内容です。
この出願は「intent-to-use(使用意思に基づく出願)」と呼ばれるもので、ざっくり言えば「この名前、ひとまず押さえておきますね」という段階のもの。
区分は自動車関連(International Class 12)で、車名としての登録を意図したものと見られています。
ただ、ここで大事なのは、
商標を出願したからといって、その名前のクルマが必ず市販されるわけではない
ということ。
メーカーは結局使わない名前を数多く登録するのも事実なので、その前提は心に留めておきたいところです。
🔧 「TX」が示すもの──過去のスバル車名と”ターボ+AWD”の系譜

では、「TX」という二文字には、どんな意味が込められているのでしょう。
これについてスバルは「コメントできない」という姿勢を崩しておらず、現時点で公式な説明はありません。
ですので、ここからはスバルの過去の命名ルールを手がかりにした”読み解き”になります。
スバルの車名では、これまで
「T」がターボを、「X」が四輪駆動(AWD)を示してきた
という見方が一般的です。
よく知られているのが「XT」というバッジで、フォレスターやアウトバック、レガシィの上級・高出力グレードに使われてきました。
「TX」はその並びを入れ替えたような形ですね。
さらにさかのぼると、「TX」という呼称自体は、かつて日本市場のレオーネやインプレッサ、レガシィにも使われた歴史があるそうです。
(※「T=ターボ」「X=AWD」はあくまで過去の傾向からの推測で、スバルが「インプレッサTX」について明言したものではありません)
🕊️ MT搭載モデル3台のティーザー──「インプレッサTX」と結びつけて語られる理由

この商標の話が一気に盛り上がっているのには、理由があります。
出願のほんの数日前、スバルが「マニュアルトランスミッションを積んだ新型を3台、開発中」だと公表していたからです。

これは2026年6月6日、富士スピードウェイで行われたスーパー耐久シリーズ第3戦(富士24時間レース)の場での発表でした。
スバルの公式アナウンスによれば、3台はいずれもモータースポーツで培った技術と知見を織り込み、「もっと気軽に走りを愉しめるクルマ」として、
2027年までに届けられる予定とのこと。3台の内訳は、新型のWRX(セダン)、新型のBRZ、そして1台の5ドアハッチバック
と報じられています。
このうち最も注目を集めているのが、3台目のハッチバック。
スバルの最高技術責任者(CTO)兼執行役員副社長である藤貫哲郎氏(Tetsuro Fujinuki)は、
このクルマを「手頃なベースカー」であり、「WRXやBRZとは異なる個性」を持つ存在
だと説明したと伝えられています。
エンジニアが自分たちのアイデアを、既存の資産を活かしながら形にできる——そんな位置づけのようです。
(このハッチについては、2025年のジャパンモビリティショーに出展された「Performance-B STIコンセプト」の市販版ではないか、という報道もありますが、両者の関連性は確定していません)

お気づきかもしれませんが、「手頃」「ハッチバック」「WRXとは違う個性」というキーワードは、
ちょうどインプレッサというクルマの居場所と、するりと重なります。
だからこそ、その直後に出てきた「インプレッサTX」という商標が、「もしかして、あのハッチがこの名前を名乗るのでは」と結びつけて語られているわけです。

海外メディアのなかには、ティーザーで見せた”名もなきハッチ”の正体こそ「インプレッサTX」かもしれない、と書くところもあります。
なお、残る2台についても少し触れておくと、
WRXは従来の「TY75」に代わり、先代STIに積まれていた頑丈な「TY85」6速MTを採用する
と報じられています。

BRZは、2025年に日本で300台限定・抽選販売されたSTI Sport Type RAの流れをくむ、軽さと走りの愉しさに振った一台になりそうだ
とのこと。

三台ともスバルが2026年4月に新設した「スポーツ車両企画室」が手がける、という点も語られています。
📋 現行インプレッサのおさらい──なぜ「大きく異なる」と言われるのか

「現行と大きく異なるインプレッサ」という言い方が出てくる背景も、現行モデルを見るとよくわかります。
いま北米で売られているインプレッサ(ハッチバック)は、
2.0L 自然吸気の水平対向4気筒(152馬力)の「Sport」と、2.5L 自然吸気(180馬力)の「RS」
という2グレード構成。
そして組み合わされるトランスミッションは、いずれもCVTのみです。
スバルらしくAWDは標準で備わっているものの、走りの刺激という意味では、どちらかといえば穏やかな性格、と評されることが多いモデルです。
ここに、もしターボエンジンや6速MTが組み合わされたら——
確かにそれは「現行とは別物」と呼びたくなる変化です。
インプレッサにはもともとAWDが標準で入っているので、ターボとインタークーラーを足すだけでも、ぐっと表情が変わる余地がある、という見方もあります。
そう考えると、「インプレッサTX」という名前への期待がふくらむのも、無理はない気がします。
🌙 静かな期待として──”自分で操る歓び”が戻ってくるのなら
個人的には、このニュースのいちばんの魅力は、馬力の数字でも、バッジの意味でもない気がしています。
「もっと気軽に走りを愉しめるクルマ」。スバルが選んだこの言葉が、なんだか優しくて。速さを誇るためではなく、自分の手でギアを選び、自分のペースで道と向き合う——そういう、ひとりきりの静かな時間のためのクルマ。もしインプレッサTXが本当にそんな一台として現れるのなら、それはきっと、誰かにとっての小さな逃げ場所になるのだと思います。
まだ書類のなかにそっと置かれただけの名前。けれど、その奥に流れている”運転そのものを慈しむ”という思想は、確かに伝わってくる気がします。続報が届く日を、コーヒー片手に、のんびり待つことにします。
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■ 参考にした主な情報源(記事末の任意掲載用)
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・Carscoops(商標出願): https://www.carscoops.com/2026/06/subaru-impreza-tx-trademark/
・CarBuzz(インプレッサTX商標): https://carbuzz.com/subaru-impreza-tx-trademark-turbo/
・Autoblog(インプレッサTX名称の可能性): https://www.autoblog.com/news/subarus-new-manual-hot-hatch-may-have-an-impreza-tx-name
・Carscoops(MT 3台のティーザー詳報): https://www.carscoops.com/2026/06/subaru-new-manual-models/
・Motor1(MT 3台/日本市場前提の指摘): https://www.motor1.com/news/798020/subaru-three-new-manual-gearbox-cars/


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